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クリスタルマギカ第五話

 
 
 俺にはわからないが、莫大な知識が頭に流れ込み、気を失う感覚というのは貧血に酷似しているらしい。
 俺は何とか立ち上がり、完全に気を失っているグレースケールをベッドに寝かせると、これからどうすべきか首をかしげる。
 
 一時間三十二分。
 
 それが、今まで知識を流し込まれ気絶した者が目覚めるまでの時間の平均である。
 もちろん、人間の脳にはリミッターが存在するから、命に別状は無い。
 今までの経緯を見るからに後遺症も存在しない。
 一瞬脳を巡った知識なんて記憶できるはずがないから、目覚めた時にあるのはただ頭がくらっとして気絶したという記憶だけだ。
 
 
 
 
 だからこそ、このまま起きるのを待つという選択肢も存在する。
 

 
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クリスタルマギカ第四話


 
 
 最悪とは何か。
 かつて会った能力者は最悪とは死だと断定した。
 月並みな答えだと思う。
 命あっての物種という言葉もあるし――
 まぁ、大体の人にとって最悪というのは、その生命を失う事を差すのではないだろうか?
 自殺する人間にとってそれはおそらく違うのだろうが。
 
 
 では、二番目に不幸な事とは何か。
 かつて会った能力者は、その己のクリスタルマギカを失う事だと定義した。
 能力者の八十パーセントは、その身に宿るクリスタルマギカを自己を形成している最も大きな要素だと認識しているという統計が出ている。
 結局彼は、自らの能力を暴走させて命を失ってしまったけれど――
 自らを形作る物に殺されて、さぞ本望だったのではないだろうか?
 
 
 ではそうなると、今のこの状況は果たして何番目くらいに不運なのだろうか?
 見覚えの無い場所に、戦闘能力皆無の技術畑の人間が一人。
 眼の前には、かの名だたる敵対組織の能力者。
 拘束はされていなくとも、部屋に唯一存在する扉の前にはその敵が一人。
 壁は一見しただけで、俺如きに破れるものではないと分かる。そもそも、たとえ十数センチの薄い壁だったとしても俺には破れない。
 発泡スチロールで出来ているならおそらく破れるだろうが……ダンボールだったら危ういかな。デスクワーク専門の人間を舐めるな!
 まー普通にそんな耐久力のない材料で建物を作るわけがないから仮定するだけ無駄だけどね……
 
 あーどうしてこうもまあ俺は運が悪いんだ。
 
 
 みんな死ねばいいのに。
 
 
 
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クリスタルマギカ第三話


 
 
 眼の前に、かの有名な敵対勢力のメンバーがいる。
 
「あの……怪我の方は大丈夫ですかい?」
 
 ダークグレーの瞳が俺の事を覗き込むようにして見つめていた。
 俺にどうしろと言うのですか、神様!!
 
 
 
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クリスタルマギカ第二話

 
 
 世界は酷く複雑だ。
 俺は常にありとあらゆる有象無象と繋がる事のできる異能を持っていた。だからこそわかる。
 この世界は一筋縄ではいかない。
 事実は小説よりも奇なり。
 あるいはこの世に存在する全ての空想妄想は実在しうる事象である。
 
 つまる所何を言いたいかと言うと……
 
 眼が覚めたら、見た事もない部屋のベッドの中でした。
 
 
 
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# クリスタルマギカ第一話

 そしてきょうれつなせんこうがのうりをやいた。
 
 
 
 何が悪かったのだろうか。
 辺りに漂う濃厚な血の匂い。
 草木を燃やし尽くす炎の匂い。
 辺りに響き渡る奇妙な破砕音が耳を打つ。
 
 誰かが肩を揺する。
 もうほとんど抜け落ちた感触。
 触れられているという事実すらあやふやで、あーこれはもうだめかも分からんね、と俺こと如月太郎《キサラギ タロウ》はぼんやりとたゆたう視界を見つめていた。
 
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