第六十話:黒紫色の理想
その少女がメイドの募集に参加するためにやってきたのはもう何年前の事になるだろうか。
第一印象は『美しい』で、第二印象が『おかしい』だった。
まるで炎をそのまま転写したかのような鮮やかな赤髪に、年端もいかない少女にして、幼いながらも完成された冷たい美貌。弱冠十二歳にしてレベル600オーバーと言う才能も十分に怪物と呼ぶに相応しいステータスではあったが、その表情、佇まい全てにおいて感じられた研ぎ澄まされた刃のように怜悧で現実感のないその雰囲気こそが、その存在の最も異端と呼ぶべき点だったのだろう。
二束三文で転がっているような才能ではなかった。
間違いなく子供であるにも関わらず、容姿においても能力においても既に一流の域に達していたそれは、どんなに眼の利かぬ人間の眼でも見開かざるをえない異彩に満ちていた。
それ故、なのだろう。明らかにおかしかったその存在をルーデル家に招き入れてしまったのは。
決して触れてはいけないものだと本能でわかっているのに手にとってしまう。強烈な魅力を秘めた呪われた赤き宝石。
その少女の名をクリアと言った。
第六十話【無色透明の少女の話】
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第一印象は『美しい』で、第二印象が『おかしい』だった。
まるで炎をそのまま転写したかのような鮮やかな赤髪に、年端もいかない少女にして、幼いながらも完成された冷たい美貌。弱冠十二歳にしてレベル600オーバーと言う才能も十分に怪物と呼ぶに相応しいステータスではあったが、その表情、佇まい全てにおいて感じられた研ぎ澄まされた刃のように怜悧で現実感のないその雰囲気こそが、その存在の最も異端と呼ぶべき点だったのだろう。
二束三文で転がっているような才能ではなかった。
間違いなく子供であるにも関わらず、容姿においても能力においても既に一流の域に達していたそれは、どんなに眼の利かぬ人間の眼でも見開かざるをえない異彩に満ちていた。
それ故、なのだろう。明らかにおかしかったその存在をルーデル家に招き入れてしまったのは。
決して触れてはいけないものだと本能でわかっているのに手にとってしまう。強烈な魅力を秘めた呪われた赤き宝石。
その少女の名をクリアと言った。
第六十話【無色透明の少女の話】
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