夢箱?かつて見た夢?:prologe

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 昔、心の底から魔法使いに憧れたことがある。
 手を触れずに火を出したり翼も持たずに整然とした理屈一つなく空を飛べたり。
 それはまさしく夢のような夢で、でも僕にとってはれっきとした望みうる―――叶いうる将来だった。
 指をならせば地面からリンゴの木が生えて、念じればスプーンが曲がり、水の中で呼吸をせず何日でも何週間でも過ごせる。
 
 昔、自分が他の人間とは別の、もっと高次元の存在だと思っていたことがある。
 周りの連中は脆弱で貧弱で自分と比べてなんの価値のない人間で。
 それはまさしく本当に愚かな考えで、良く考えればそんなことなくて、自分も他人と同じ人間という種だとわかりそうなものだったけど。
 一目見れば何もかも覚えて、考えることで世界全体の価値が上がって、聴覚視覚五感は人間とは思えぬほどのものだった。
 
 それらはまさしく人が一度は誰しも考えることで、でも大抵はそんなことなくて、それに気づいたときはどう考えても手遅れで、本当に望んでいるわけでもないのに。
 自分より幼い子がそういう空想幻想妄想を抱いていても止めるすべがなくて、それは自分もかつて抱いていたから。
 「魔法って本当に存在すると思う?」
 「馬鹿言っちゃいけないよ。存在するわけがないじゃないか」
 昔を思い出すようで、微笑ましくなり、頬が自然に緩む。
 「世の中にはまだ魔法が存在していると思っていたことある?」
 「あるよ、今の君たちと同じようにね。まったくもって愚かで楽しかった」
 そんな会話をしていると科学じゃ解明できていないことがあるらしい。UFOとUMAとか子供の玩具箱をひっくり返したようなきらめき。
 でも、確実に僕の中にはもはや魔法なんてのはカケラ一つ存在の余地なく、実際存在していない。
 それが例え過去のことであれ、確実に僕の中に存在していたとしても―――
 
 それは所詮かつて抱いた理想の話。
 
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