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クリスタルマギカ第三話


 
 
 眼の前に、かの有名な敵対勢力のメンバーがいる。
 
「あの……怪我の方は大丈夫ですかい?」
 
 ダークグレーの瞳が俺の事を覗き込むようにして見つめていた。
 俺にどうしろと言うのですか、神様!!
 
 
 

 助けられたのではなく拉致られたと仮定すると、この場所はおそらく当然だが敵の本拠地だろう。
 見た事ないのも当然だ。
 いくら俺が各研究室を訪れた事はあっても、貴晶結社の本部を見た事はない。
 というか、貴晶結社の本部は、政府が躍起になって探しても見つかっていないのだ。
 誰も見た事のない場所にこれて喜ぶべきか……否!!
 俺は本業が研究者で、最終決戦に乗り込んで第一歩目に罠にかかり死に掛けるほどの貧弱さ。
 相手は、閃と龍が二人でかかって尚倒しきれなかった実力者。
 どうみたって勝ち目はない。
 
 その上こっちはけが人だ。どうせいっちゅうねん。
 
 身体がぎしぎし痛む。
 やってられん。激痛とまでは言わないが、それでも我慢するのが苦しい程度の鈍痛に顔が歪む。
 
 仕方ない、開き直る事にしよう。
 どうしようもない事はどうしようもないのだ。
 言っておくけど、今の俺は一歩も歩けない。
 異能を使えば歩く事くらいはできそうだが、歩くつもりもない。
 逃走成功率0%。俺は諦めがかなりいいのだ。
 そもそも……
 
「…………」
 
「……えと……何か?」
 
「いや……」
 
 眼の前の少女に敵意は全く見えない。
 あるのは大きな戸惑い、そして多少の警戒のみだ。
 大体、よく考えてみれば俺はあの時瀕死の状態だったのだ。生体に多少の造詣がある俺自身が確信していたくらい……あの時の俺はひどかった。あのまま放って置かれたら一時間と持たずに黄泉へと旅立っていただろう。
 
 果たして瀕死の敵を助けるだろうか?
 
 俺なら確実に助けない。むしろトドメを刺す。
 可哀想だなーくらいは思うかもしれないが、それはそれ、これはこれ。互いに相容れないと分かった時点で双方には等しく人を殺す権利が存在し、そして人に殺される義務がある。
 戦闘員じゃないから、などという理屈はその大きなルールの中で何の意味もない。
 戦闘員じゃなくても俺は閃や龍のためにあらゆるサポートを行ったし、貴晶結社の中にはそのために死んでいった者もいるはずなのだから。
 
 
「あの……怪我は……」
 
「大丈夫だ。君が治療してくれたのか? 助かったよ。ありがとう」
 
「いえ……当然の事をしたまでですから。……あの――」
 
 心配そうな口調で尋ねてきたモノトーン・グレースケールに答える。
 口の利き方がきもい?
 放って置け。第一印象は大切だ。
 
 
 ありとあらゆる生き物を直接的・あるいは間接的に殺してきた。
 それでも俺は生きていた。
 
 一時、四肢を潰され、喉を焼かれ、神経を寸断され、視界までも失ったにも関わらず今俺は生きている。
 数奇な運命と言うか何と言うか……この世界の現実はいかに奇怪に絡み合う蜘蛛の糸の如き様相で混沌としているか理解している俺の考えを持ってしても、些か呆れを隠し切れない。
 かといって悲しいかと聞かれたらその答えはNOになる。
 俺は生き延びたかった。
 だからこそ、この後たとえ事情聴取という名の拷問が待っていたとしてもこの状況を喜ぶべきだ。
 少なくとも生きているだけ、あの時あのまま死んでしまうより今の方が数百倍もマシだ。
 
 ……ちょっとまて。
 
 
 俺はちょうどその時、ある可能性について思い立った。
 敵対勢力のエースがさしたる傷もなくここにいる。
 これが何を意味しているか。
 
 
 
「あ……」
 
「ど、どうかしましたか?」
 
「……いや、なんでもない」
 
 
 モノトーン・グレースケール。とりあえずモノたんとでも呼ぼう。
 モノたんの顔を見つめる。
 モノたんは視線に気づき、その可愛らしいお顔に怪訝そうな表情を作った。
 
 
 
 
 ……まさか、閃と龍は負けたのか?
 
 どうして今まで思いつかなかったのか。
 敵対組織のエースがぴんぴんしている時点で、あの最終決戦の勝敗は予測できる事ではないか。
 閃と龍のコンビが負けた……信じられない事だが、信じざるを得まい。
 今までその事がかけらも頭に浮かばなかったのは、心のどこかであいつらが主人公だと思い込んでいたからだろう。
 主人公は基本死なないものだ。いや、死んだとしてもコンビのヒロイン・ヒーローのうちのどちらか片方が一般的。
 あいつらの能力は強力だ。その上、二人一緒に戦うと、能力の相性からその力は階乗的に膨れ上がる。
 だからこそ俺は、ブラックリストのトップに輝くミュータスとの最終決戦に勝機を見出し、ミュータスの力が低下するであろう満月の夜、全力を持って打って出るよう遥教授に進言したのである。
 まぁ、そのメンバーに俺が組み込まれた事は予想外だったが……
 二人の心音が止まった瞬間、二人の腕につけられた特殊な腕輪が爆発するように設定しておいたから相打ちくらいはできたと思うが……さすがのミュータスも主人公コンビを相手に決死の戦いを行った後、勝利したその瞬間を狙ったように巻き起こる爆発にはお陀仏だろう。
 
 良心? そんなもの痛まない。
 二人が死ぬまでは絶対に爆発しないし、死んだ後の爆発ならむしろその死を無駄にしなかったという事で二人の幽霊から礼の一つでも貰う権利があるだろう。
 
 だが、そうなるとちょっと……いや、かなり不味いな。
 涙は出ない。
 多少悲しいが、一緒に飯を食った仲間が死んでしまう如きの事で涙を流すには俺は醜いものに触れすぎている。
 問題はアレだ。
 俺の味方が誰一人いないってこと。そして敵陣のど真ん中に居るという事。
 何この四面楚歌。
 
 ただ一人、味方になりそうなのはこの眼の前にいるモノトーン・グレースケールだけ。
 少なくとも、今現在この少女は敵ではない。サイコメトリーの真似事をしていたので、人の感情くらいは分かるつもりだ。
 
「あの……さっきから大丈夫ですか?」
 
「大丈夫だ。ちょっと現状に混乱しててね……」
 
 さて、どうするか。
 
1.ごまかす。
2.開き直る。
3.土下座する。
4.ぷるぷる、ぼくわるいけんきゅうしゃじゃないよぉ。
 
「……それで、ここはどこなんだ?」
 
 結局誤魔化す事にした。
 だってこの状況、もしかしたらこの子俺が敵対組織の一員だって知らないかもしれないじゃん。
 わざわざ俺が敵だなんて知らせることもないだろう。
 
 
「貴晶結社の本部の私の部屋です。えっと……第三研究室の方ですよね?」
 
「は?」
 
 
 思わず口からこぼれる間抜けな声。
 
 ……めっちゃばれてるし。
 
 覗き込むように上目遣いで放たれる視線は酷く透明で、何もかもを見透かしているかのような光を保っていた。
 
 
 
ランキング、もしよかったらどーぞ

 
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